2026年、産業用OTリモートアクセスは転換点を迎えています。世界の製造業・重要インフラは、より標準化された、ID中心で監査可能なリモートアクセスモデルへと移行しつつあります。しかし、その成熟度の現実は、地域や組織によって大きく異なります。
Secomeaが実施した製造業・重要インフラ分野の400名を対象としたグローバル調査では、同じ方向に向かいながらも、成熟度に大きな差があることが明らかになりました。そして重要な示唆があります。成果を分けるのは地域差ではなく、統制をどれだけ一貫して運用に組み込めているかです。
地域別に見た成熟度の現実
調査データを地域別に分解すると、それぞれ異なるパターンが浮かび上がります。
北米:運用は成熟、統制実行にばらつき
170社以上の調査では、ベンダーアクセスの有効化は速く、IT/OT連携も進んでいます。一方で、ベンダーセッションの完全な監査可能性を持つ組織は46.2%にとどまり、認証情報を月次以上でレビューしているのはわずか22.8%です。成熟した運用モデルを持ちながら、統制の一貫性には差があります。
DACH・東欧:ガバナンスはあるが、規模が複雑性を生む
ガバナンスの意図は明確で、認証情報管理は欧州の中で最も厳格です。しかし44.6%がリモートアクセス関連のインシデントを経験しており、ベンダーエコシステムの規模が複雑性を生んでいます。
フランス・ベネルクス:速さが統制の深さを上回るリスク
ベンダーアクセスの有効化スピードは欧州で最速(74.3%が数分〜数時間で有効化)。しかし、インシデント率は欧州最高の48.6%で、認証情報の月次レビューはわずか11.4%です。スピードが統制の深さを上回っています。
UK・アイルランド:構造的に最も成熟、速さは最遅
インシデント率は欧州最低の23.1%、ベンダー監査成熟度は57.7%と最高水準、ゼロトラスト深度も最高(2.81/5)。一方でベンダー有効化スピードは最も遅く、速さではなく統制の深さを優先するモデルです。
成果を分ける5つの構造的要因
地域別データが示す最も重要な示唆は、成熟度の差は地理そのものではなく、いくつかの構造的要因の組み合わせによって生まれるということです。
- ガバナンスの責任範囲:IT部門とOT部門のどちらがリモートアクセスの責任を持つか、またはどう共有するかが、統制の一貫性に直結します。
- ベンダーエコシステムの規模:外部ベンダーの数が増えるほど、アクセス経路・認証情報・ワークフローの管理は複雑になります。
- ID管理と認証情報ライフサイクル:認証情報を定期的にレビューし、休眠アカウントを排除できているかどうかが、リスク露出に影響します。
- セッション可視性と監査可能性:誰が、いつ、どの装置に、何をしたかを記録・確認できる体制があるかどうか。
- 統制をどれだけ一貫して運用に組み込めているか:ルールや仕組みが存在することと、それが日常運用で一貫して実行されることは別問題です。
日本の製造業が確認すべきポイント
日本の製造業は、上記の地域別パターンのいずれかに近い状況にあるはずです。次の5つの問いを自社に当てはめて確認してください。
リモートアクセスの責任範囲は明確ですか?
情シスとOT部門の役割分担が曖昧な場合、統制の一貫性が損なわれます。
ベンダーアクセスを一元的に把握できていますか?
装置メーカーごとに異なるOEMツールや個別アカウントが乱立していませんか?
誰が・いつ・どの装置に・何をしたかを確認できますか?
セッションの可視性と監査証跡は、規制対応とリスク管理の基盤です。
認証情報を定期的にレビューしていますか?
休眠アカウントや共有パスワードは、攻撃者にとって最も狙いやすい入口です。
アクセス有効化のスピードと統制のバランスは取れていますか?
速さだけを追求すると、フランス・ベネルクスのようにインシデント率が高まります。
市場が向かう方向:統合型・監査対応型モデルへ
北米・欧州ともに、市場は同じ方向へ向かっています。アクセス経路の集約、ID中心の管理、監査可能なセッション記録を備えた統合型リモートアクセスモデルです。
VPN・OEMツール・個別アカウントが並存する環境では、可視性・統制・監査対応のいずれにも限界があります。日本の製造業も、この移行の方向性を早期に把握し、自社の現在地を確認することが重要です。
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