コンプライアンス

JC-STARが調達の条件に変わりはじめた

セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)は、IoT製品のセキュリティを機器の単位で評価する制度である。電力分野を先行例として、任意で取得するものだったラベルは、調達で問われる条件へと位置づけを変えつつある。本ページは、外部とつながる機器を納める事業者に向けて、対象の見極めから、機器が要件を満たしたあとに残る仕事までを整理する。

情報基準日 2026年8月 本文の制度情報は一次資料の記載にもとづく整理です

制度を知る

JC-STARが評価するもの

評価の対象は組織の体制ではなく、機器そのものである。運営を担うのは独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で、定められたセキュリティ要件を満たしているかどうかを、製品の型式ごとに確かめる。会社として情報セキュリティの認証を持っていても、納める機器の評価にはならない。逆に、機器がラベルを持っていても、それは会社の管理体制を語らない。

評価の単位
機器(製品の型式)
運営機関
IPA
確かめること
定められたセキュリティ要件への適合

調達の実務では、この二つが別々の書類として届く。取引先の管理体制を問うものと、納入される機器の要件を問うものである。JC-STARが答えるのは後者になる。機器を納める側から見れば、自社の製品そのものが問われる位置に置かれる。

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対象となる機器の3条件

対象になるのは、次の3つをすべて満たす製品である。どれか一つでも欠ければ、制度の枠の外に出る。

機器を含むこと

ハードウェアとしての機器を含むこと。ソフトウェアだけの製品は対象にならない。機器に必ず伴うサービスも、単体では外れるが、機器と一式であれば対象になり得る。

IP通信の機能を持つこと

IPネットワークで通信する機能を備えていること。実際にその機能を使う予定がなくても、備えていれば該当する。

インターネットにつながる可能性

直接つながる場合も、他の機器を経由して間接的につながる場合も含む。

パソコンやスマートフォンのような汎用の情報機器は、3つを満たしていても対象から外れている。想定されているのは、決まった用途を持って現場に据え付けられる機器のほうである。制御装置、監視装置、ゲートウェイ、計測器。納入先の設備の一部になるものが、この制度の主な相手になる。

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★1から★4までの段階

適合ラベルは4つの段階に分かれる。★1(レベル1)と★2(レベル2)は事業者自身による自己適合宣言で、★3(レベル3)と★4(レベル4)は第三者による認証となる。段階が上がるほど要件は細かくなり、評価に第三者が入る分だけ手続きも重くなる。

段階ごとの評価の主体
段階評価の主体要件の性格
★1自己適合宣言すべての対象製品に共通する基礎の要件
★2自己適合宣言★1の上に要件を重ねた段階
★3第三者認証製品の類型ごとに定められた要件
★4第三者認証類型別の要件のうち最も高い段階

有効期間は交付の日から最大2年で、続けるには更新の申請が要る。取得した時点で終わりではなく、要件を満たした状態を保てているかどうかを、期間ごとに問い直す設計になっている。

対象を見極める

自社の機器は対象になるのか

自社が納める機器が対象に当たるかどうかは、製品の名称でも用途でも決まらない。決めるのは、その機器がIP通信の機能を持つかどうかと、設備の中でどこにつながっているかである。電力分野の規程改定案と公的な説明資料には、その線の引き方が書かれている。

図1 対象範囲の判定地図 領域1(対象) 対象設備に使用されるIP通信機能を有する機器。 制御装置、監視装置、ゲートウェイなど。 実際にその通信機能を使う予定がなくても、 機能を持つ以上は対象となる。 領域2(原則は対象外) システムの構成機器に直接 含まれないIoT機器。 領域3 (領域2から引き戻される) 領域2に属していても、対象設 備に対する制御機能を持つ場 合、またはゲートウェイ等を 介さずに主要な構成製品と通 信上接続する場合。 例外的に対象へ戻る 本図は当社の解釈ではなく、規程改定案および公的な説明資料の記載を整理したものである

どの領域に当たるかは、製品の仕様書ではなく、自社のネットワーク構成図の上で確かめることになる。

判定チェックリスト

  1. 1

    その機器はIP通信の機能を持つか(実際に使う予定がなくても、持っていれば該当する)

  2. 2

    その機器は、対象設備の構成機器に直接含まれるか

  3. 3

    構成機器に含まれない場合、その機器は対象設備に対する制御の機能を持つか

  4. 4

    構成機器に含まれない場合、その機器はゲートウェイ等を介さずに主要な構成製品と通信上接続しているか

3か4に当てはまる場合、原則として対象外に見えても対象となる。ネットワークを論理的に分けていても対象から外れない。

最終的な判断は、属地の一般送配電事業者および納入先への確認による。

先に起きたこと

電力分野で先に起きたこと

制度の位置づけが最初に動いたのは電力分野である。系統につながる設備に納める機器について、★1の取得を求める記述が規程改定案に書き込まれた。任意の取り組みだったラベルが、契約の可否を左右する条件へ性格を変えたことになる。2026年8月の時点で正式な改定はまだ行われていない。以下は改定案と公的な説明資料の記載にもとづく。

  1. 任意の取得

    制度の開始からの前提。取得するかどうかは事業者が決める。

  2. 調達要件化の方針

    電力分野で、納入される機器への要求として規程改定案に書き込まれる。

  3. 契約条件への反映

    施行は2027年4月1日で、それ以降に契約申込みが受け付けられた設備から適用される。適用の時期は電源の種類ごとに分かれている。

適用の時期は電源の種類で分かれている。太陽光発電と蓄電池は、特別高圧と高圧が2027年4月、低圧50kW未満が2027年10月となる。低圧が遅いのは、流通している在庫を踏まえた経過措置による。風力発電は2027年4月で、外部通信との結節点になるゲートウェイのファイアウォール、またはこれと同等の防御機能を持つ機器から先に要件化される。風力は他の電源種よりIP通信を用いる機器が多く、すべてを同時に対応させるには時間がかかると整理されたためである。燃料電池は2028年4月となる。

起点になるのは、契約申込みが受け付けられた時点である。申込書を送った日でも、設備が完成した日でも、運転を始めた日でもない。2027年3月末までに受付が完了している設備と、すでに使われている機器には遡って適用されない。ただし施行後に既設の機器をIP通信の機能を持つ機器へ交換する場合は、交換する機器に★1を取得した製品が求められる。同じ機器への交換であっても、軽微な変更としては扱われない。リプレースの案件が、実際には最初の分かれ目になる。

要求の主語は調達側へ移った。ラベルの有無は制度の審査ではなく、日々の商談と見積の場で問われるようになる。同じ動きが自分の分野で起きるかどうかは、納入先の調達仕様に何が書かれるかで決まる。電力は、その最初の一例である。

地図の空白

SCS評価制度との関係

機器を評価するJC-STARに対して、組織の側を評価する制度がある。サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度、略してSCS評価制度である。取引先の情報セキュリティ対策の水準を、供給網の全体で共通の物差しに載せる仕組みで、運営はこちらもIPAが担う。二つを一枚の地図に置くと、間に空白が現れる。

図2 二つの制度と間の空白 組織のIT基盤 SCS評価制度が評価 製造環境等の制御システム いずれの制度も直接の対象としていない 機器と組織の間に残る運用の領域 IoT製品 JC-STARが評価 本図は制度側の記載にもとづく整理である

製造環境などの制御システムは、いずれの制度も直接の対象としていない。供給網の全体で対策を共通化することが難しいため、他の制度やガイドラインにもとづく対策が想定されている。この空白は当社が描いたものではなく、制度の側が引いた線である。機器のラベルと組織の評価を揃えても、その間をつなぐ運用は残る。

地図の空白

★1が対象とする脅威の範囲

★1が求めるのは、機器そのものが備えるべき基礎の要件である。初期設定の保護、利用者の認証と権限、ソフトウェアを更新する手段、通信とインタフェースの保護、攻撃を受ける面を減らすこと、機密情報の保存、利用者のデータを消す手段、安全に設定して使い廃棄するための情報提供。8つの区分に整理された16の項目が中身になる。並べてみると、どれも設計と製造の段階で機器へ作り込める性質を持っている。

★1が引き受ける範囲

  • 出荷時の設定の保護
  • ソフトウェアを更新する手段
  • 通信とインタフェースの保護
  • 脆弱性に対応する窓口と体制

機器に載せて出荷できる性質

要件を満たしたあとに残る範囲

  • 誰がその機器へ接続するか
  • いつ、どの装置へ入ったか
  • どの権限で何を許すか
  • 接続の事実をどう記録するか

運用の中で日々変わる性質 次の節の主題

二つの範囲を分けているのは、機器の出荷時に決まる性質か、運用の中で日々変わる性質かという違いである。初期設定の保護も、更新の仕組みも、出荷までに載せて出せる。しかし来月どの保守員がどの装置に入るかは、出荷の時点では誰にも決められない。調達側が問う形も、この二つを分けたものになっていく。機器の要件はラベルで、運用の統制は納める側の実装と記録で答えることになる。

右側にあるものは、制度の不足ではない。★1は基礎の水準を対象製品の全体へ行き渡らせるための段階であり、想定される脅威をすべて包含する設計にはなっていない。資源エネルギー庁の資料も、太陽光発電や蓄電池に想定される脅威への対策を★1がすべて含むわけではないと整理している。上位の段階と、運用の側で講じる対策が続くことを前提にしている。

JC-STARは機器を評価する制度であり、運用の中の接続を誰に許すかは、はじめから評価の外に置かれている。この範囲は、機器が★1を満たしたその先で、機器を納める事業者と使う側の仕事として動きはじめる。

Secomeaの担当

評価を誰が行うか

JC-STARの適合評価は、段階によって主体が異なる。★1と★2は事業者による自己適合宣言で、★3以上が第三者による認証となる。この違いは制度の設計であり、優劣ではない。そのうえで、制度の現在地と、当社がこれまで受けてきた評価を、混ぜずに並べておく。

制度側の集計

310件取得製品の登録

123社事業者数

全件が★1★1と★2は自己適合宣言による

2026年8月時点のIPA公表一覧の全件集計

当社の第三者評価

IEC 62443-4-1 認証取得(TÜV)。IEC 62443-4-2(コンポーネント要件)について第三者監査により準拠を実証。

開発プロセスと製品要件の両面で第三者の評価を受けている

当社はJC-STARの適合ラベルを取得していない。一方で、8,000社以上の採用と100,000ユーザ以上の利用の土台には、製品の要件だけでなく開発の進め方そのものを第三者が確かめてきた経緯がある。ラベルの取得状況と第三者評価の実績は、別の軸として読める状態にしておいたほうが、調達の場では話が早い。どちらか一方で他方を代弁させると、確かめたいことが確かめられなくなる。

制度側の登録が全件★1であることは、制度の立ち上がりの位置を示している。★3以上の要件は製品の類型ごとに整備が進んでいる段階で、これから分布は変わっていく。当社もこの制度を、機器と調達をつなぐ共通の言葉として重く見ている。機器の側で答えられることと、接続の統制で答えること。これからの調達では、その両方が並んで問われる。

よくある質問

JC-STARとリモートアクセスについて

JC-STARはどんな製品が対象になりますか

機器を含み、IP通信の機能を持ち、インターネットにつながる可能性がある製品が対象です。パソコンやスマートフォンのような汎用の情報機器と、ソフトウェア単体は対象外です。

★1と★3では何が違いますか

評価の主体が違います。★1は事業者自身による自己適合宣言で、★3は第三者による認証です。★3以上は製品の類型ごとに定められた要件にもとづいて評価されます。

取得は義務ですか

制度としては任意です。ただし電力分野では規程改定案に位置づけられ、実務上は納入先の調達条件に左右されます。

2027年4月より前に契約申込みが完了している設備はどうなりますか

遡って適用されません。基準になるのは契約申込みが受け付けられた時点で、申込書を送った日ではありません。増設や交換を伴う場合は個別の確認が必要です。

既設の機器を交換する場合はどうなりますか

施行後にIP通信の機能を持つ機器へ交換する場合、交換する機器には★1を取得した製品が求められます。同じ機器への交換であっても軽微な変更としては扱われません。交換しない既設の機器には適用されません。

自社の機器が要件の対象になるかはどう判断しますか

本ページの判定チェックリスト4問で一次の判定ができます。最終的な判断は、属地の一般送配電事業者および納入先への確認によります。

ネットワークを分離していれば対象外になりますか

なりません。論理的に分離していても、対象設備に対する制御の機能や、主要な構成製品との通信上の接続があれば対象に含まれます。判定はIP通信の機能の有無によるため、その機能を使う予定がない機器も対象です。

SCS評価制度とは何が違いますか

評価する対象が違います。SCS評価制度は組織のIT基盤を、JC-STARはIoT製品を評価します。製造環境などの制御システムは、いずれの制度も直接の対象としていません。

Secomea製品はJC-STAR適合ラベルを取得していますか

取得していません。当社が受けている第三者評価は次のとおりです。IEC 62443-4-1 認証取得(TÜV)。IEC 62443-4-2(コンポーネント要件)について第三者監査により準拠を実証。

機器の適合のその先を設計する

対象の判定から接続統制の実装まで、状況に合わせてご案内します。